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【研修レポート】石川県教育委員会主催 教育課程研究集会「総合的な探究の時間」部会
高校教員対象「探究学習と生成AI」
―金沢工業大学 山本知仁教授による講演と演習―

2025/9/5 NEW

2025年8月25日(月)、金沢工業大学 扇が丘キャンパスで、石川県教育委員会主催「令和7年度 高等学校教育課程研究集会『総合的な探究の時間』部会」が開催されました。県内の高等学校教員51名が参加し、探究学習の実践発表や意見交換に加え、金沢工業大学 情報理威廉希尔中文网站 知能情報システム学科 山本知仁教授による「探究学習と生成AI」をテーマとした講義?演習、さらに学内のデジタルツール体験や施設見学を通じて、最新の教育的取り組みに触れました。

■研修概要

日時:2025年8月25日(月) 9:30~16:00

会場:金沢工業大学 扇が丘キャンパス 7号館 303教室 他

参加者:石川県内の公立?私立の高等学校教諭 51名

主催:石川県教育委員会

■プログラム構成

1.行政説明:「総合的な探究の時間に求められること」(石川県教育委員会)

2.研究発表:石川県内の代表校による「総合的な探究の時間」の取り組み紹介

3.講義?演習:「探究学習と生成AI」
講師:金沢工業大学 情報理威廉希尔中文网站 知能情報システム学科 山本知仁 教授

4.デジタル機器体験(VR?MR?3Dプリンター等の操作体験と見学)

講義?演習「探究学習と生成AI」

●生成AIが教育に与えるインパクト

山本教授は、まず近年の生成AIの急速な進化と教育現場への影響について語りました。ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)は、文章生成や翻訳、要約、プログラミング支援など、多様な機能を備えています。山本教授は、これらを活用することで、生徒の疑問や課題に即応する“伴走者”としてAIが機能できることを強調しました。

●教員業務における具体的ユースケース

また、教員の立場においても、AIは授業準備の効率化に大きな力を発揮します。教材の例題や説明文を短時間で生成できるだけでなく、保護者対応メールの文案作成、学校説明会やPTA用の説明資料の下書き、会議録の要約作成、中学校訪問用の広報資料作成などにも活用できると具体例を示し、日常業務の負担軽減や働き方改革の一助になると説明しました。

●生成AIの利用上の注意点?リスク管理

年に示した「生成AIの教育利用に関するガイドライン」 を踏まえ、適切に活用することが重要だと説明がありました。
その上で、以下のような留意点が示されました。

?個人情報や生徒の成績を入力しないこと

?サービスの年齢制限や利用規約を確認すること

?著作権を侵害する可能性のある生成(例:既存作品の模倣)を避けること

?AIが誤った情報(ハルシネーション)を示す可能性を理解し、結果を吟味すること

これらの点を踏まえ、ガイドラインに沿った形で活用することが求められるとまとめられました。

●プロンプトエンジニアリングの実践

次に、AIを効果的に使うための鍵である「プロンプトエンジニアリング」が取り上げられました。演習では、参加者自身がAIにプロンプトを入力し、生成される回答を比較する体験が行われました。
山本教授は実際にいくつかのプロンプト例を紹介し、参加者とともに結果を比較しました。例えば「400字で要約してください」と条件を加えることで、冗長な文章が授業に適した簡潔な要約に変わること、また「専門家として答えてください」と役割を指定すると、回答の深みや精度が格段に向上することが実演されました。
さらに、授業の中で活用する場合を想定し、「高校1年生向けにわかりやすく」「箇条書きで」などの条件を加え、生徒の理解度に応じた教材が瞬時に作れることを示すと、会場からは驚きの声が沸き上がりました。

●探究学習と生成AI

講義の後半では、生成AIが探究学習の各フェーズにどのように寄与できるかが詳しく紹介し、参加者らもプロンプトを打ち込んで生成される回答を体験しました。
例えば、課題設定では「地域の高齢化によってどのような問題が生じているのか」といった問いを立てる際、AIが関連する切り口や背景知識を示すことで探究の入り口を広げることができます。また、生徒がテーマを見つけにくい場合は「地域課題を一つ挙げてください」といったシンプルなプロンプトを通じて考えるきっかけを作ることができます。情報収集では、関連する視点や参考資料を提示することで、収集の方向性を明確にできます。分析フェーズでは、統計的手法の提案やグラフの読み取り支援を通じて、思考を深める手助けとなります。まとめ?表現では、箇条書きや図表の生成を通じて、成果の可視化と伝達力の向上が図れることが、解説されました。
これらを通じて、AIは単なる「答えを出す存在」ではなく、生徒に考えを深めさせるための「壁打ち相手」として機能し、探究活動をより深く、主体的に進めるサポートになることが強調されました。特に、高校現場で課題とされる「課題設定の難しさ」や「情報の取捨選択の困難さ」に対して、生成AIが大きな支援となる可能性があると示されました。参加者らは、これまで抱いていたAIに対する懐疑的なイメージが好転し、むしろ積極的に活用していく必要性を感じているようでした。

デジタル機器体験(VR?MR, 3Dプリンター,アナログレコード試聴,eスポーツプロジェクト見学)

講義?演習後、学内のデジタル機器の体験?見学を行いました。26号館チャレンジラボでは3Dプリンターの実機?作品を見学したり、VR?MRの実機に触れ、デジタルを活用した教育の最先端を体験しました。また、ライブラリーセンターのPMC(ポピュラー?ミュージック?コレクション)ではアナログレコードを試聴したり、31号館のEntertainment & Digital Collaboration Labでは、学生らによるeスポーツプロジェクトの活動の様子を見学し、デジタルを活用した実践的な教育環境から刺激を受けていました。

  

参加者の反応

実際にAIを使いながら授業や校務に役立つ具体的な使い方を学んだことで、アンケートには以下のような声が多く寄せられました。

?生成AIの回答を足がかりにさらに探究を深めることが十分可能だと実感しました。生成AIを積極的に活用していきたいです。

?高校生にとっては、生成AIを使うことが当たり前になってきていることから、教員側も使いこなせるようになっておく必要があること。いかに良質なプロンプトを作成していくか、教員側の力量に左右されるなと感じた。

?大学の様子を見学し、デジタル機器を体験できたことは、とても貴重な経験でした。

現場の先生方がAIの教育的可能性を前向きに受け止めたことが印象的でした。

まとめ

今回の研究集会は、探究学習での生成AIの活用を目指し、 AIを授業や業務にどう取り入れるかを模索することで、高校現場における学びの質をさらに高める契機となりました。今後もAI活用の可能性を探りながら、教育現場における学びの質をさらに高めていくことが期待されます。

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